34.蟲

2008年2月12日
塩川の熊野神社に立ち寄りて起こりたること。
大方の集落ならば寺社1社なり建立されしもの。
我取り分けて信心深い質でなし。
醜き我欲ただ拭いたし、そればかりのみ。
田圃に残る先客の跡、追いしその先、別の先客ありや。
境内の積雪踏むは人でなし、猫と白鷺二人あり。
寺社に残飯あるでなし、何を求めて行き着くや。
このものら、人及ばざる力持ちたるかな。
澄みたる静寂、厳かなる寒気に身締まりて、束の間過ごし鳥居潜りて後にす。

車に乗り込むやいなや、いつになく職場への連絡思い立ちたる不思議。
右胸ポケットに手差し込めば有るはずの携帯なきに狼狽す。
落ち着けと自らの声なき聲に振り返る様。
はたと気付けり。
神社に向かう道すがら、田圃の溝を飛び越えし時、あるいは長靴のカバー起こし時、落ちたに違いなきやと。
後戻りして溝に跨る足跡、身を屈めて見入れば積雪に刺さる携帯の一部、直ちに認めたり。
胸撫で下ろすなり。
事なき得ざれば瞬く間に忘れる類、されど…。

余所事に聞きたる話。
或る人、海外へ旅発つ予定あり。
其の日近付くにつれ沸々と鬱情募りたりける。
はてさて何が災いしたものか、皆目知る由なし。
迷いし揚句、旅止めたり。
後日、その旅先で邦人旅行者交通事故の急報あり。
死傷者多数あり。
其旅、或る人参加予定のものなり。

もう一話。
地震なきにもよらず、壁掛けの時計、突如落ちたり。
家人、胸騒ぎを覚えり。
その直後、けたたましく電話鳴りて身内の死を知らせるなり。
時計の停止時刻、すなわち死亡時刻となれり。

これらの類、世に多かりし。
されど今人、気に掛けること少なし。
偶然の中の必然を探らず。

蟲の知らせ、疳の蟲、浮気の蟲…。
これら諸々の蟲、見えざる虫なり。
昔人、蟲の兆しに敏なるや。
運命の分かれ道、そこにあり。
人知超えたる第六感にありなむ。

神社での取るに足りない様なれど教えられたり。
我、蟲の起こりたる妙得たり。
心醜くあれば気付かず、心澄みたれば気付くものなりと。
心留め置くことなり。

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